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権利行使に強い明細書作成のために研究者は何をすべきか?

 私は弁理士でありますが、企業において10年間研究開発職に従事していました。研究者の立場から見て、権利行使に強い明細書作成のために何をすべきかについて私の考えを幾つか記載していこうと思います。


対象となる発明を弁理士に十分に理解させること

 権利行使に強い明細書作成のために、まず前提となるのが、対象となる発明を弁理士に十分に理解させることが必要となります。


 具体的には、発明の背景、技術的課題、課題の解決手法、作用、具体的な実施形態・実施例、有利な効果等の技術情報について、弁理士に過不足なく伝え、理解させることが重要となります。


 これを聞いた研究者は、大変だなとげんなりされたと思います。しかし、実際には、最初から研究者が十分な技術情報を準備していることは殆どないこと、研究者から多くの技術情報提供があったとしても権利行使に強い明細書作成に繋がる情報は多くないことが殆どであることを、弁理士は経験から理解しています。そして、このような場合、不足している技術情報について弁理士は説明を求める、技術情報の提供を求める等すると思います。この際に、弁理士と円滑なコミュニケーションをとれば基本的に問題ないと考えます。


発明の分野における先行技術を弁理士に把握させる

 上記のことを過不足なく伝えると記載しましたが、発明の作用や実施形態が重要なのは当然ですが、意外に重要なのが発明の背景だと考えます。発明の背景のなかには、発明の分野における先行技術を弁理士に伝えるのが重要と考えます。研究者は発明を、こんなに世の中に役に立つ技術だから当然特許もとれるだろうと考えがちです。しかし、世の中の役にたつ技術だから特許が取れるわけではありません。特許が取れるのは、先行技術との差、があるからです。このため弁理士は、明細書作成する際に、(最も当該発明と構成が近い)先行技術との差、を常に考慮して明細書を作成します。なお、先行技術の情報は、明細書を作成するにあたり必要な、「先行技術→課題→解決するための手段(発明)→効果」というストーリーを作るときにも必要となります。


 ここで、弁理士が先行技術を誤って理解していた場合、本来必要でない不要な限定的記載をしてしまう可能性があります。この場合、不要な限定が入っている分、強い特許権が得られません。また逆に広く記載してしまい、先行技術との差がみられない、として権利を取得できない可能性があります。


 このため、発明の分野における先行技術を弁理士に把握させることは重要です。


 弁理士に伝える先行技術に関しては、難しく考えなくても良いと思います。研究者が考える主観的な先行技術でも構わないと考えます。特許文献でも、学術論文でも、他社製品情報でも構いません。基本的に大部分の弁理士は明細書作成の際に、研究者からの提供がなくても、弁理士自身で先行技術把握に努めます。先行技術を把握しなくてはそもそも上述した明細書のストーリーが書けないためです。このため研究者からの提供がない場合であっても問題ありませんが、研究者から提供された先行技術は、弁理士が技術水準を把握するための非常に大きな助けになります。また、頂いた先行技術をもとに研究者とディスカッションすることができ、弁理士の発明理解が進み、良い明細書を作成し易くなります。是非、先行技術を弁理士に把握させることを意識してみてください。



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